通常の矯正治療の考え方にはないインビザラインの審美的利点はとしてどのようなことがあげられるかをお話しします。

3Dで治療前治療後がわかるということが今までの歯科治療にはない要素であり、シュミレーションなので、全く同じというところまではいかないとしても、さまざまな角度から検証することができ、ワイヤー矯正や他の歯科治療も同じですが、お口の外側からだけの判断で治療が進めるしかないのと比べると、歯という同じものがふたつとないものが、オーダーでデジタルデータに変換されていることで、職人技ではなく、科学としてとらえられるようになったということを意味します。

言葉でいうと簡単ですが、重大な要素です。抜歯矯正を行う場合にスペースが残ることも多く、無理やり並ばせてスペースを無くしたとしても、保定後に後戻りして隙間ができるケースが多くみられるのです。また、矯正前に患者さん本人は、ブラックトライアングルが発生するとは思いもよらないことが多く、矯正医としては、ブラックトライアングルを無くすための歯のIPRを後から行うと治療計画自体が全く違う内容となってしまうため、矯正の世界では、ブラックトライアングルは無視してきたともいえます。

３Dデジタルデータにより、矯正治療術後の予測ができるため、ブラックトライアングルの予測が可能となります。ワイヤー矯正では出来なかった要素です。既にブラックトライアングルがあり、それを小さくするために矯正治療を検討される方もいらっしゃいますので、お気軽にご相談ください。

ブラックトライアングルを小さくするには、隙間をレジンで埋めるかヒアルロン酸を注入する、被せ物の形で隙間を減らすしか方法がありませんでした。歯の形には、逆三角形、卵型、長方形に分けられますが、逆三角形の歯の場合、歯並びが悪い状態ではブラックトライアングルは目立ちませんが、綺麗に歯が並ぶとブラックトライアングルが出てきて目立ちます。ワイヤー矯正治療では、仕方ない要素なので、あきらめるしかありませんでしたが、インビザラインではIPRという歯と歯の間を削る技術により、逆三角形を長方形に変えることで、歯間の距離を小さくすることができ、ブラックトライアングルが縮小します。また、歯間の距離が縮むと歯冠乳頭が両脇から押されて少し盛上がるので、より目立ちにくくなります。

スマイルラインは重要ですが、ワイヤー矯正で綺麗に並んだ歯並びはなぜか独特です。「矯正しました？」とわかることが多いのは、元々歯が大きいために並びきれていないのが並んでしまうため、犬歯から犬歯までの6本の歯並びの幅が大きく笑うと、歯がいっぱいという感じが伝わってくる為だと思われます。歯冠の幅をIPRで調整する場合、犬歯から犬歯の6本の並びの幅を調整することができ、今までは、ラミネートべニアやオールセラミックなどの審美補綴でしか対応できなかったことに対し、新たな手段が現れたといえます。歯は削りたくないのは当たり前ですし、一度削ると元に戻りません。IPRでも歯を削りますが、審美補綴に比べたらずいぶん少なく、自分の歯の大半は残ります。ただ、歯の色は自分の歯なので、ホワイトニングなどで白くするのが関の山となり、劇的な白い歯を求める場合は、審美補綴しかありません。審美補綴で自分の歯を削ってまで、歯並びを完璧にしたい訳ではないという場合は、自分の歯でできる限りの前歯の審美性を追及することが、マウスピース矯正を応用することで可能となります。

通常のワイヤー矯正はワイヤーによるアンカーとの綱引きの仕組みで歯を動かすため、例えば、上顎中切歯を上顎に押し込むという治療は非常に困難で、難易度はかなり高くなります。それは、中切歯が押し込まれる力と側切歯が下に下がる力が同時に働くためです。中切歯だけに力をかけるということができないのです。そのため、矯正用インプラントを使用しそれをアンカーとする場合には、中切歯だけに力をかけることは可能となりますが、インプラントを歯茎に埋入するという行為はハードルが高くなります。インビザラインの場合、マウスピースですから、外科処置を伴う治療に比べると気持ちは楽になります。術前術後で自分の歯並びがどのように変わるのかをイメージ出来た後治療に入れるためモチベーションも上がりやすくなります。上顎だけでなく、下顎の前歯の圧下もできるため、咬合平面で湾曲が強くワイヤー矯正治療で難易度が高かった歯列に関しても可能性が見いだせます。